『「納品」をなくせばうまくいく』を読みました

ソニックガーデン倉貫社長が執筆された本を拝読しました。

 「納品」をなくせばうまくいく(倉貫義人著 日本実業出版社刊) | Facebook

意識の高い受託開発エンジニアにはぜひ読んでいただきたい内容です。クラウドとともに受託開発の手法が進化し、顧客も自分もより生産的にシステム開発ができる道が拓けてきました。

私が共感するポイントを3つ挙げると..

 

見積もりの非効率さ

顧客にいろいろ要望を出させて、全部工数に足して、大目にバッファを積んで見積書を書いたら、顧客が金額の高さにびっくり。そこから押したり引いたり交渉開始。どちらも自分を守るのに必死。妥結点を見出すものの、お互い不満足。こんな非効率なやり取りからそろそろ卒業したいですよね。

見積もりをせず、まず定価となる金額があって、その中で顧客のためにベストを尽くす。満足してもらえたら継続する。そんな新しいビジネスモデルができる時代が来たのだと思います。

 

開発と運用の同時並行

クラウドを活用すれば、開発と運用は同時並行で進められますね。今までのように、別途、運用環境を(バッファをもって)用意して、運用のための人員を(バッファをもって)確保して、時間と手間(とバッファ付きのコスト)をかけた運用をする必要はありません。

開発と運用を同時並行させることで、「作って使って直す」というサイクルをぐるぐる回して気持ちよく改善していくような、そんな受託開発が可能になりました。

 

顧客もチームの一員

「納品」をなくすことで、顧客との一体感が増しますね。完成物を納品するという形態だと、言った言わないをなくすために、お互いがガチガチの議事録と仕様書でけん制し合うことにつながります。

ベンダーは、顧客の事業ゴールを達成するためにベストを尽くす。その対価として継続的な契約を勝ち取る。プロサッカーチームに助っ人として参戦するような、そんな感覚で開発できる時代ですね。

 

サイボウズクラウドで提供する業務アプリ開発プラットフォーム「kintone」の周辺でも、新しい受託開発が生まれています。先日、ジョイゾー社から発表された「システム39」は、なんと定価がついた受託開発です。顧客と会議室で打ち合わせしながら、どんどん開発していってしまうそうです。開発工数を人月で請求してきたビジネスモデルではありえなかったことです。

今、日本のITサービス業界では「2015年問題(参考リンク:ITproまとめ - 2015年問題:ITpro)」が取り沙汰されています。今のうちから新しいビジネスモデルにチャレンジし、事業ノウハウを身につけておかなければ、この社会環境の変化に対応していくことは難しいでしょう。

「受託開発の未来は暗い」なんて言っている人がいたら、ぜひこの本を読みましょう。実はめちゃくちゃ明るい未来が待っていると思います。

U-22 プログラミング・コンテストに思う

サイボウズ社長の青野です。このたび「U-22 プログラミング・コンテスト」の実行委員長を務めさせていただくことになりました。

 

私がもし「今までの人生で一番よかった選択は?」と聞かれたらこう答えます。「中学生の時にプログラミングを学ぶと決めたことです」と。

 

私は当時14歳。ガンダムのプラモデルすら正しく作れず、半田ごてを握れば鳴らないラジオができ上がる。不器用この上ない私の創作意欲を満たしてくれるのは、プログラミングしかありませんでした。

 

プログラミングはすごい。人間よりもはるかに速く計算できるコンピュータを王様のように使い、自由に仕事をさせられる。トランプの相手を務めさせたり、自分が考えた物語を形にしたり。学校では変人扱いを受けることもありましたが、私にとっては最高に楽しい時間。パソコンは1台しかなくても、私のアイデア次第で 10 本でも 100 本でも新しいプログラムを生み出せる。これぞ人間の知だ。未来の道具だ。そう確信してから、早 28 年。いったい社会はどう変わったでしょうか。

 

こちらの記事「池田信夫 blog : ソフトウェアが世界を食う」をぜひお読みください。本はソフトウェア産業になりました。音楽もソフトウェア産業になりました。メディアも、通信も、教育も、小売りも、物流も、旅館も、タクシーも、プログラミングをする人たちの手によってソフトウェア産業に変化しています。

 

今、商店街で本屋を営む人が競争している相手は、プログラミングをする人です。プログラミングによって、コンピュータを自由に働かせ、こなす仕事の量を何百倍、何千倍に拡大した人と競争しています。コンピュータはさらに速く、さらに安くなっています。スーパーコンピュータのような機材が個人で使えるようになった今、プログラミングを学んだ人に、学ばない人が勝てるはずはありません。竹やりと機関銃の戦いのように滑稽ですらあります。

 

賢い人たちはプログラミングをもっと学ぼうと主張し続けています。こちらの記事「オバマ、ジョブズ、ザッカーバーグが語る「プログラミングを学ぶ必要性」とは【動画紹介】 | TechAcademyマガジン」をご覧ください。アメリカではプログラミングを義務教育化する流れにあります。

 

さて、話を「U-22 プログラミング・コンテスト」に戻します。このコンテストは35年も前からプログラミングを学ぶ若者の育成に貢献し、数多くのプログラマーを生み出してきました。しかし、圧倒的に知名度が足りません。圧倒的に重要性を理解されていません。日本の未来を決めるような最重要クラスのコンテストなのに....。何とかしたい。

 

今回、プログラミングを学ぶ若者をクラスのヒーローにし、学校のスターにし、私たちの未来を創造する人材に育てるため、実行委員長という大役を引き受けさせていただくことにしました。今後、様々な方に協力を仰ぐことになるかと思いますが、ぜひともご支援ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

そして、22歳以下でプログラミングを学びたいみなさん、たくさんの応募を待っています! 未来はすでにみなさんの手にあります。

中間決算発表についての解説

本日、サイボウズの中間決算を発表させていただきました。普段は「株主軽視」と指摘されることもあるサイボウズですが、業績に変化が見られますので、IR のコメントを出してみたいと思います。

 

ご存知のとおり、サイボウズは2008年のリーマンショック以降、売上の伸長がぱったり止まっております。また、2010年初頭からクラウド事業に大きな投資をしており、利益率は下がり続けています。

 

にもかかわらず、人材採用には力を入れてきました。社員数はグループ全体で 500 名(派遣・海外含む)に近付いています。売上規模が 40-50 億の会社にしては、ずいぶん多い方だと思います。

 

また、様々な人事制度を試行しながら、人材の活用と働き方の多様化に努めてきました。その結果、離職率は下がり、女性比率が高まっております。

 

そんなメンバーの力を結集し、クラウドサービス「cybozu.com」を 2011 年 11 月にリリースしました。発売開始からまだ 2 年弱ですが、有料契約企業は 4,000 社を超え、最近は大手企業での採用も相次いでいます。

 

今回の中間決算では、売上・利益ともに前期比で二桁成長となりました。今までの活動の成果が、「業績」という形で少しずつ現れてきたのだと解釈しています。

 

しかしながら、通期での業績予想につきましては、6/25 に発表させていただいたとおり、利益はほとんど出さずに投資し尽くすつもりです。クラウド事業に手応えを感じていますので、短期的な業績よりも、信頼あるクラウドサービスの提供と拡販に向けて、さらに積極的に活動してまいります。

 

今まで日本のソフトウェア業界は、欧米企業に後れを取り続けてきました。しかし、これから始まるクラウド時代では、この流れを変えたいと思っています。Windows のように、Linux のように、Google Search のように、世界中で使われるソフトウェア製品・サービスを生み出すことが私たちの夢です。私たちのグループウェアが世界中で使われることを目指し、引き続き努力してまいります。

過去のTweetの補足と訂正について

中小企業支援サイト「ミラサポ」について、私が知っている情報を先日のブログでまとめさせていただきました。今回は、ここに至るまでの私の Tweet の中で、誤解を生んだもの、噂レベルなのに拡散してしまったものをピックアップし、修正と補足をさせていただきます。 

 

7/31 の Tweet 中小企業庁がセールスフォースを使って立ち上げたサイトについて。何が得られるのかわからないし、UIは意味不明。恥ずかし過ぎて若者には見せられないレベル。ここに税金が何十億円も使われているという事実に驚愕してください。 https://www.mirasapo.jp/

 

以下のように補足させていただきます。

  1. 正確には、中小企業庁ではなく、中小企業庁から事業を受託したコンソーシアムが立ち上げたサイトです。
  2. セールスフォースの基盤が使われているのはコミュニティ機能など一部であり、静的コンテンツの管理などは別システムが使われています。
  3. 従って、サイトの品質についてはセールスフォース社製品に原因があるのではなく、構築したベンダーによるものです。また、今後改善されていくと思われます。
  4. この事業には推定 48 億円の予算がついているようですが、これは今後も含めた事業にかける総額であり、今回の立ち上げに使われた費用は、そのうちのごく一部であると思われます。

 

8/1の Tweet その1 「中小企業支援サイト「ミラサポ」について。失敗したJ-SaaSと同じ結果になると予測したが、それを下回る勢い。中小企業向けのビジネスができない企業が集まり、やはり中小企業のことがわからない中央の予算をぶんどるITゼネコンの構図。 http://www.salesforce.com/jp/company/news-press/press-releases/2013/05/130528.jsp

 

セールスフォースさんのホームページにあったプレスリリースにリンクを貼っていますが、前述のとおり、このサイトの成功可否は、受託したコンソーシアムの責任であり、セールスフォースさん自体とは直接的な関係はありません。 

 

8/1の Tweet その2 「やっている人は恥ずかしいと思わないんだろうか。何十億もの税金を使って申し訳ないと思わないんだろうか。J-SaaSの失敗についての反省や振り返りを聞いたことがないが、今回も同じことになるんだろうか。 https://www.mirasapo.jp/ 」

 

前述のとおり、現時点では初期の構築費用+αくらいしか発生していないと思われます。しかしながら、「何十億もの税金」がこのサイトに今後投じられる可能性があります。

 

8/1の Tweet その3 「48億円の予算のうちシステム構築費はなんと30億円という噂」 / 未来の企業応援サイト(通称ミラサポ)8月から稼働開始 http://www.brave-con.co.jp/blog/?p=1076 」

 

「システム構築費が30億円という噂」というのは、あくまでもブログを書かれた方の発言であり、私自身が直接的に仕入れた情報ではありません。また、「システム構築費」に何が含まれるのかは明確ではないことにご留意ください。

 

以上です。

 

我々が納めた税金が有効に使われているのか。今後も注視して見ていきたいと思います。

「ミラサポ」は第二の「J-SaaS」か?

中小企業・小規模事業者の未来をサポートするサイトとして先日公開された「ミラサポ」について、Twitter で問題提起をしたところ、大きな反響をいただきました。議論の前提としていただくための情報をまとめましたので、どうぞお読みくださいませ。(以下の内容は、私が調べた2013年8月4日時点のものです。リンク先の内容などは、その後、変更される可能性がありますことをご了承ください。) 

[追記] それから3年後の2016年8月時点の結果を調査しました。

「J-SaaSについて

  • J-SaaS =「中小企業向け SaaS 活用基盤整備事業」
  • 経済産業省によるプロジェクト
  • 2009年3月開始
  • 目標は「中小企業 50 万社
  • 予算は「40 億円」程度であると推測。
  • 「新社会システム総合研究所」が受注。
  • 結果は大幅未達。
  • 参考記事1: 「電子政府を推し進めようとする国の独り善がり。中小企業50万社へ普及するとはとても思えない」「表向き、業者選定に公募方式を採用するものの、裏では最初からシステムの重要部分を受注する企業がNTTデータなどにほぼ決定しているというのだ。」(週刊東洋経済 2008年5月3日号 より)
  • 参考記事2: 「40億円の税金が投入され、新社会システム総合研究所という会社が当初は運営をスタートし、富士通が基盤システムを構築して2010年にその運用まで丸投げされる形になった。」「当初の目標は50万社の中小企業の獲得にあったが、2009年末の実績では3,000社程度にとどまっているという。」(PC-Webzine「40億円のSaaSプラットフォームは中小企業のIT化を加速するのか?」より)  

「ミラサポ」について

追記(2015.7.7)

  • 2014年度に新規事業として41.2億円の予算を用意。2015年度当初予算案では4.9億円を計上し、機能強化を図るという。 (BCNの記事より)

所感

  • 金額、目標、進め方などにおいて、共通点が多いと感じます。
  • 多数の実名を挙げて申し訳ありませんが、税金がより有効に使われるようになることを期待しての情報発信であるとご理解いただければ幸いです。(2013/8/4 追記)
  • 一部の所感を削除しました。このエントリーからはできるだけ私の所感を抜き、事実を共有するためのものにしたいと思います。(2013/8/4)

テレビの録画方法

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ハードディスクレコーダーでテレビを予約録画するとき、写真のように字幕付きで録画します。

すると、観るときに倍速で再生しても、話していることは字幕からだいたいわかるので、時間の短縮につながります。

少子高齢化の組織的問題

少子高齢化は、「若者の負担が重くなる」とか「労働人口が減る」とか、そういった短期的な視点だけで語れないと思います。

少子高齢化は、組織の意思決定に関わる問題である、と思います。

今の民主主義は、多数決で意思決定される仕組みになっているので、人口ピラミッドが逆三角形になっているということは、高齢者の意見が採択されるということです。

つまり、人口ピラミッドが逆三角形であり続けると、多数派である高齢者の都合で物事が決まり続けます。

これが少子高齢化が引き起こす一番の問題だと思います。

変化できない企業は衰退していくように、国家も変化できないと衰退していきます。

見渡してみれば、政治家も経営者もおっさん(失礼!)ばかりです。

このおっさん連中は、家庭を顧みないことで昇進してきたノー育児世代ですので、当然ながら少子高齢化に対する問題意識は低いし、対策を打つための知識もありません。

残念ながら、既得権益を持った高齢者を守る方向で意思決定され続けるでしょう。

あと20年くらいでしょうか。

本当に残念ながら。

ここから20年、沈没を続けると、そろそろ気付くんじゃないかと期待しています。

そのとき、多数派になるであろう第二次ベビーブーム世代の私たちがどのように意思決定をするのか。

少子高齢化対策に真剣に取り組めるのか。

若者の足を引っ張らないようにしないといけませんね。